花 | SST'S フィールドスケッチ
ツリフネソウ(釣船草)
花は季節を映す鏡のようなもの、多くを語らずとも、そこにあるだけで時の流れを知らせてくれます。
ツリフネソウ
今回ご紹介するのは"ツリフネソウ"……どこにでも見られるありふれた花だけに、咲いている時期の印象が強くなるのでしょうか。私はこの花を見ると、夏の終わりを感じます。
すでに花期はピークを過ぎてしまいましたが、渓流の釣り人には馴染み深い花だと思います。

渓沿いの湿った場所や、日当たりの悪い斜面などに群生することから、ツリフネソウには常に湿っぽいイメージが重なります。
例えば……源流へと歩き出す早朝、朝露に濡れた草薮へ突入するとき、いつもその傍らにこの花が揺れているような……。

ツリフネソウは"釣船草"と書くのが一般的で、釣り人としてはついつい『釣り船……』という印象を抱いてしまいがちです。
しかし、名前の由来は"船を吊るしたようなカタチ……"ということらしいので、そこから漢字をあてはめれば、"吊船草"と書いたほうが適切かもしれませんね。

キツリフネ
シロツリフネ
ツリフネソウには三色の花色があるようです。
最もよく見られるのは紫色、次に黄色(キツリフネ)、稀に白色(シロツリフネ)。

異なった花色が混じり合った群落あるそうですが、多くの場合は同色の花で群落が形成されているように思います。

花言葉は『私に触れないでください』『詩的な愛』、そして『安楽』など、なかなかロマンティックなものが多いようです。


竹田市大野川水系
昨晩遅く、出張先の大分から戻ってきました。
上の写真は大分県竹田市内を流れる大野川水系の支流です。画面右上付近には豊富な湧水群があり、湧水を利用したアマゴやニジマスの養殖が行なわれています。

実はこの場所は自分にとって思い出の場所なのです。
禁漁期に入ってから、釣りとは別の用事でここを訪れるとは考えてもいませんでした。

10年ほど前の春、今は亡きアメリカの友人、スティーブ・コープランドと一緒に九州を釣り歩いたとき、最初に訪れたのがまさにこの場所でした。
このあたりでは二人共にアマゴは釣れませんでしたが、フライを入れるたびに飛び出てくるカワムツを釣っては大騒ぎ。

上流部でようやく釣り上げた小さなアマゴを手にして……スティーブにとっては記念すべき初アマゴです……大きな身体のスティーブが、満面の笑顔を浮かべていたことを思い出します。

九州のツリフネソウ
竹田の湧水群周辺の湿地では、この季節になってもツリフネソウの大群落が各所で見られます。花の色は紫のみで、本州で見られるものよりも色が濃いような印象を受けました。

弾けるような秋の陽射しを浴びたツリフネソウが、ささやかな記憶や想い出を乗せたゆりかごのように、ユラユラと揺れています。
心に浮かんできたのは、『安楽』という花言葉でした。

天上の花
曼珠沙華
少年時代、彼岸花を見るのがとても怖かった記憶があります。
激し過ぎる赤は毒々しくもあり、スーッと真っ直ぐ伸びた緑の茎との対比はまさにアンバランス。おまけにどこを探しても葉が見当たりません。
他の草花とは較べようのない色とカタチは、異様な雰囲気を放っていました。

彼岸の頃、両親に連れられ墓参りに行く道すがら、日溜りに咲く群落の脇を通り過ぎても、けっして立ち止まることはありませんでした。
自然が死者へたむける神聖な花だから、花の香りはお線香と同じだと思っていたくらいです。

彼岸花は別名"曼珠沙華"と呼ばれています。この言葉には"天上の花"という意味があるそうですが、全国各地に広く分布していることもあり、その呼び方は実に多彩です。
その中でも、シビトバナ、ユウレイバナ、ミチワスレグサ、ドクユリ等々……、あまり縁起のよくない言い方が目立ちます。
誰の目にも、この世のものとは思えない天上の花、冥土の花というイメージを抱かせるのかもしれませんね。

さて、本日10月1日から、ほとんどの地域で渓流釣りは長〜い禁漁期間に入ります。
昨日は午前中にどうしても抜け出せない用事があったことに加え、土曜日で混雑が予想されたため、釣りに出かけるのはあきらめました。

そんなわけで、昼頃まで部屋でじっとしていましたが、午後にはいつものサイクリングロードを走りに出かけました。
彼岸花はその途中に見つけたものです。
道端に咲く秋の花を撮ったり、野良ネコと遊びながら、季節の流れを身体で感じていました。

穏やかに晴れた良い日でしたが、最終日に釣りに行けないのは寂しいことです。
でもそれは、釣りに行っても同じだったかもしれませんね。

ムシトリナデシコ
群落
草いきれのする森のトレールを駆け下りると、そこには別世界が広がっていました。

鮮やかなピンクの花のお花畑が、はるか前方の山並みまで、ず〜っと続いていそうな景色……吹き抜ける沢風を感じながら、ホッと心が安らぐ瞬間です。

ムシトリナデシコ
この可憐な花の名は"ムシトリナデシコ" 、日本各地で極普通に見られる野の花です。
渓流部でも初夏から晩夏にかけて、荒れた河原に点在していたり、ときにはこのような群落を作っている様子をよく見かけます。

でもこの花、江戸時代にヨーロッパから移入された"外来種"なのです。

私たちは何100kmも車を走らせ、この場所へやってきました。
しかし、そこで出迎えてくれるのは、元々そこにあるはずの風景ではない……。
そう思うと、そんなことに気付かないほうが幸せなのかもしれませんね。

でも、いったいどんな草花と入れ替わったのでしょう?
今となっては本来の風景を想像することすら不可能と分かっていても、かつてそこにあったはずの別の風景にはとても興味があります。

どこにでも見られる"ごく普通の風景"の裏側には、人間たちの所業の影が見え隠れしています。
それを思うと、単純に感動を覚える風景さえ、信用できなくなってしまいそう。
せめて鮮やかな花の彩りを愛で、元気な渓魚たちに心を癒してもらいましょうか……。


今日・明日は『シャロムの森』FFスクールが開催されます。
シャロムの渓の上流部に棲む天然イワナたち……その希少性をあらためて思い知らされる今日この頃です。

トリカブト
トリカブト とぶかりと
涼しげな夏の終わりの空を見上げて、秋の訪れを感じるとき、傍らに咲く艶やかな紫色の花がふと目に入ることがあります。
どこでも見かける野の花ですが、じっくり観察すると精巧に組み立てられたオブジェのようで、どこか異様な雰囲気を放っています。帽子をかぶった小人たちが集まっているようにも見えるし、異次元に住む花の妖精たちの別の姿なのかもしれません。

その花が"トリカブト"という猛毒の植物であることを知っていても、季節を告げる花として見れば、愛らしい存在に思えてくるから不思議です。

その昔"トリカブト殺人事件"というのがあって、世間を騒がせたのを覚えているでしょうか?
トリカブトの毒は"ブス(附子)"と呼ばれ、かつては弓矢の先に塗って狩猟に利用されていました。。
ちなみに、一般的には醜女を意味する"ブス"という言葉の語源は、神経毒の"ブス"が体内に入ると、無表情になってしまうことに由来しているそうです。

トリカブト毒素の成分は"アルカロイド"と呼ばれ、これは窒素を含む塩基性化合物の総称です。
カフェインやニコチン、モルヒネ、コカインなどもアルカロイドの一種ですし、ジャガイモの芽にもソラニンというアルカロイドが含まれています。

トリカブトという名称の由来は、舞楽を演じるときに使われる"鳥兜"というかぶりものから来ているそうです。まったくストレートな言い回しで、面白くも何ともないですけど。

季節を告げる草花にも、いろいろな性質があって実に興味深いものです。

この世には、ヤマメの毒に冒されて人生を狂わせた輩もたくさんおります。
これは記号化できない毒素ゆえ、化学的な対処方法もありません。
不治の病として一生抱え込むしかないので、覚悟を決めておきましょう!!

カラスウリの花
真夏の夜の夢・・・
「6時までに絶対帰って来るんですよ!」
母親に散々念を押されて家を出てきたものの、やはり夕方になると魚がよく釣れるので、ついつい時間の経つのを忘れてしまいます。

兄から借りてきた時計を見ると、6時どころか7時を回っているではないですか!
釣り竿をたたもうともせず、慌てて自転車に飛び乗ります。

自転車のライトを点すと、漕ぐ力がうまく車輪に伝わりません。
そこで無灯火のまま、堤の上へと続く暗く細い道へと遮二無二突っ込むのです。

そうやって先を急いでいるときに限って、ちょっとした段差に引っ掛かり、まるで約束されたように転倒するわけです。

ふわりと浮いた身体が落ちた先は、柔らかな蔓植物の生い茂るヤブの上でした。
「どうってことねえや……」と強がってはみますが、転倒した拍子に方向が分からなくなっています。

群落
雲間に隠れていた月がいつのまにか姿を現わし、青白い光を投げかけていました。

放り投げた釣り竿を探そうとあたりを見回したら、青い闇の中にいくつもの真っ白なふわふわした物体が、ぼんやりと見えてきました。
来るときに通ってきた道には、こんなものはなかったはずだけど……。

そのとき、突然恐怖が襲ってきました。
子供心にも、違う世界に迷い込んだんじゃないかと、不安にかられたのです。

そして恐る恐る、白いふわふわした物体に手を差し出すと、今度は目をキラリと光らせた素早い動きの飛行物体がいきなり顔にぶつかってきました。

「う、うわー!」と、叫び声を上げ、慌てて逃げ出そうとしたそのとき、
「こらぁ、おめえは何やってんだ!!」

兄の力強い手で、ヤブの中から引きずり出されるやいなや、頭に"ゴツン"と一発ゲンコツが飛んできます。
私が決められた時間に戻るはずはないと、最初から承知している兄が様子を見に来て、ヤブの中で騒ぐ私を見つけてくれたのでした。

暗く曲がりくねった暗く細い道、咽るような夏草の匂い、兄の怒鳴り声……。
そして夏の夜だけにひっそりと咲くカラスウリの花の想い出です。

昨夜も"カラスウリ"の写真を撮っている最中、蜜を吸いに来ていた大きなスズメガに、何度も体当たりされました。
今となってはそれさえかわいらしく、愛らしい存在に思えます。

秋には鮮やかな赤い実をつけるカラスウリですが、無数の白い繊維に覆われた花は、いつ目にしても神秘的なイメージを膨らませてくれます。

妖しげなレースの繊維を闇に漂わせ、何かを絡め獲ろうとしている……そんなふうに感じるのは私だけでしょうか?

フデリンドウ
年齢を重ねるにつれ、今までただ眺めるだけだった花鳥風月に心を奪われたり、季節の移ろいを象徴する物事などに関心が深まるものです。

少し前まで、自分が野に咲く花を近接撮影するなんて、想像すらしませんでした。
長い間、マクロレンズを向ける先は、渓魚の顔のアップや水生昆虫に限られていましたから。

ところがこの数年、川を歩きながら視線がいろいろなところに向けられます。
以前とは明らかに眼のやり場が違ってきているのは確かなようです。

フデリンドウ
フデリンドウは、渓筋に桜の花びらが舞う頃、湿った落葉を押しのけるようにして、花を咲かせます。よく似た種類にハルリンドウというのがあるそうです。

花言葉を調べてみましたが、いろいろあるのですね。
『本当の愛』『悲しむあなたを愛しています』……というふうに、なかなか露骨にロマンティックで、思わず頬を赤らめてしまいましたわ(ポッ
また、『正義・貞節・誠実』ともありましたので、ようするにこれらの言葉の意味を拡大解釈して、より印象深い言葉にすり替えたような印象を受けます。

で、花言葉というのはどんな由来があるのが調べてみたら『雑学花言葉』というサイトに詳しく載ってました。
どうやら地域の伝承や分布による違いなど、複合的な要素が介入するため、必ずしも世界共通とはいかないようです。

筆竜胆
フデリンドウは天気の良い日中にはきれいに開きますが、夜間や天気の悪い日は閉じたままです。
その状態が筆先に似ているところから、『筆竜胆(フデリンドウ)』と呼ばれるようになったそうです。

朝、釣り場に着いたとき、フデリンドウがしっかり花を広げていれば、少なくとも午前中は晴れるのではないでしょうか。
特にデータは取っていませんが、この花が咲いているときはいつも暖かく、日中に良いハッチが来るような記憶があります。

花はハッチの指標、そして記憶に残しやすいヒントを与えてくれます。
そんなふうに花鳥風月と付き合っていけば、それらをより身近に感じることができるのでしょう。

カタクリの花とビロウドツリアブ
カタクリ春の林床を彩るスプリング・エフェメラルのひとつ、カタクリの花です。
花言葉は『初恋』、何だかロマンティックですこと。

東北や北海道には、この花の群生地が多いのですが、私の家の近くでは小規模な自生地ばかりです(知らないだけかもしれませんが)。

このカタクリは『シャロムの森』に咲いていたもので、毎年4月の中旬頃、数10株が開花します。
可憐な花なので、毎年見るのが楽しみなのですが、今年は開花時期が少々遅れているようです。

カタクリの種子には、アリが好むエライオソームという物質が含まれていて、生息域の拡大にはアリが一役かっているそうです。エライオソーム目当てに寄ってきたアリが、種子を運んでくれるのですね。

生物同士のつながりはとても神秘的です。

ビロウドツリアブしゃんカタクリの花を撮影していると、マクロレンズで近接撮影しているにも関わらず、必ずこの昆虫が割って入ってきます。

レンズのガラス面が好きなのか、それとも私のことが好きなのでしょうか?
アンバランスな体型ながら、妙に愛嬌のあるカタチをしたビロウドツリアブが、どこからともなく近付いてくるのです。
花の蜜をストローのような長い構造の口で吸う無害な虫ですが、あまりに積極的なので、ちょっとびっくりします。

これも何か深い理由のある、生物同士のつながりだったらどうしましょ!

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