ヤリタナゴ……秋の移動作業 その1. | SST'S フィールドスケッチ
ヤリタナゴ……秋の移動作業 その1.
ヤリタナゴ
魚に対して並々ならぬ興味と好奇心を抱き始めた小学生の頃、"タナゴ"は憧れの魚でした。

何といっても二枚貝に卵を産み付ける……という習性が神秘的、かつ不思議に思えて、何とかして本物を見られないものかと、子供心に策を巡らせたものです。

しかし昭和30年代後半でさえ、前橋市内でその姿を見ることは、そう簡単ではありませんでした。
群馬県のタナゴの生息状況は、それ以前からすでに悪化の一途を辿っていたようで、実際に生活している様子を観察することすらできなかったのです。

時は流れ、平成に入った頃、藤岡市に住む友人から"ヤリタナゴ"の噂を度々聞くようになりました。
それは確か、
「実家のすぐ近くの川にヤリタナゴが棲んでいるのだが、用水路の水位調整などで水が抜かれるのをどうにかしたい……、このままだと、ヤリタナゴの繁殖に必要なマツカサガイまで死んでしまう……」
そんな内容だったと記憶しています。
しかし、今度見に行かせてください!とは言ったものの、仕事や釣りに忙殺され、なかなか顔を出せませんでした。

そして気が付けば、群馬県内に残されたタナゴの棲息地は、何とその友人の自宅裏の水路だけに……!
藤岡市はヤリタナゴ、マツカサガイ、ホトケドジョウをセットで市の天然記念物に指定し、保護に乗り出しました。群馬県のレッドデータブックでも、ヤリタナゴは淡水魚の絶滅危惧砧に指定されています。

藤岡方面の友人・知人たちが中心になって、「ヤリタナゴを守る会」や「ヤリタナゴ調査会」 「やりたなごの会」といったグループに参加し、一丸となって保護活動を展開するようになったのです。

そして現在、皆さんの努力が実って、タナゴの資源量はみるみるうちに回復してきました。皆さんの活動には頭が下がる思いです。

資源回復の原動力になった活動が、毎年11月に行なわれる"ヤリタナゴ、秋の移動作業"なのです。
この作業は、産卵可能なマツカサガイの棲む水域から流下して、そこへ戻れなくなってしまった個体を捕獲し、元の場所へ移動させるものです。
つまり"ヤリタナゴの保護増殖"の活動として、藤岡市の文化財保護課から許可を取って行なわれています。

マツカサガイ
さて、前述したように、どうして藤岡市はヤリタナゴ、マツカサガイ、ホトケドジョウというセットで天然記念物に指定したのでしょうか?

それには次のような理由があります。
ヤリタナゴはマツカサガイの体内に産卵して、卵はそこで守られ成長します。
マツカサガイの幼生は、他の魚のヒレなどに寄生する時期を経ないと成長できません。
このとき、ヤリタナゴは寄生相手としてあまり適当ではなく、ここで必要なのがホトケドジョウなどの他の魚類なのです。

こうした三つ巴の関係から見えてくるものは、小さな水域の中に広がる小宇宙の存在です。
環境の影響を最も受けやすい大型の二枚貝は、どんなふうに生きていくのか。
それに依存するヤリタナゴもまた、マツカサガイが棲める環境でなければ生きて行くことはできません。
そしてマツカサガイは、タナゴ以外の魚類に依存する必要があります。

目に見えるもの、見えないもの……それらをひっくるめた生命環の中で、生き物たちは一途にその命を燃やしているのです。

続く……

  • 2018.08.24 Friday
  • 04:09
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Comment:
2006/12/02 8:41 AM, ひろぼん wrote:
タナゴは、私も興味ありました。
子どもの頃、釣りへの興味はやはり「釣キチ三平」です。兵庫のど真ん中に住んでいたのでですが、全てにおいて中途半端な地域・・・。
アブラビレのある魚は存在しないわ、タナゴなんてもちろんいない・・・。
そんな中で、彼が釣る魚は憧れでした。
うちの田舎は、GかつやOーナー針等と言った釣具メーカーの多い処で、うちももう潰れちゃいましたが父達が釣具製造をしてました。
タナゴ針とかあったんですが、「どこで釣るねん」行ってみたいなぁ・・・・。と妄想がふくらんでました。
生息している地域の方々は色々大変だと思いますが何とか未来の為に保護に頑張って頂きたいです。
2006/12/02 4:21 PM, small stone wrote:
こんにちは^^
自然環境破壊がすすみ多くの生物達が絶滅の危機に瀕しているのは誠に悲しいことです。
世の中にはまだまだ沢山こういう危機にさらされている生物達がいるのでしょうが恥ずかしながらほとんど知りません。
レッドデーターブックを見てもっと学ばなければいけませんね。

2006/12/02 6:00 PM, こにタン wrote:
移動作業ではお世話になりました。

ヤリタナゴなんて全国的に見れば、一番たくさんいる在来タナゴですが、群馬にはそのヤリタナゴすらごく限られた一部の地域にしか生き残っていない。
「自然に恵まれた」群馬県のちょっとコワイ現実ですね。

この地域の人達がヤリタナゴのすずめ焼きを作れるようになればイイな〜と作業をしながら思いました。
2006/12/03 12:09 AM, urushi-iwana wrote:
こんばんは。
 小さい頃近所の湖でタナゴをよく釣ってました。多分バラタナゴだと思いますが。庭に池を作って飼ってもいました。
 確か何とか虫の幼虫の身を餌にして釣っていたような・・練り餌でも釣れましたが。
 最近はペットショップでしか見れませんよね。
 
 又昔ネタですが、rwさんのフライフィッシングの単行本に「中学生の頃は熱帯魚飼育が趣味だった」と確か書いてあったような気がしましたが、タナゴも飼ったんですか?貝とドジョウの3点セットとなると海水魚並みの飼育施設が必要になってしまいますね。
2006/12/03 12:17 PM, riverwalkers wrote:
ひろぼんさん、
おかげさまで地元では認知度が高まって、密漁者等も立ち入れない環境が整いつつあります。どこにいても、どこからでも監視可能なオープンスペースなので、それがかえって資源回復に役立っているようです。

small stoneさん、
人間生活の利便性とのトレードオフで、多くの生物が絶滅の危機に瀕しています。
RDBの内容も各自治体で異なるので、地元のものの閲覧をお勧めします。

こにタンさん、
そういえば、タナゴといえばすずめ焼きですね。在来種のそれを、現在食べられる地域ってあるのでしょうか?
一定地域の数が増えるだけでなく、かつての棲息地そのものが復活して欲しいものです。

urushi-iwanaさん、
タナゴ釣りには、イラガの幼虫の内蔵を鉤に絡めてエサにする方法が一般的だったようです。うちのほうはイラガはたくさんいましたが、肝心のタナゴが全然いませんでした。
タナゴはタイリクバラタナゴを何年か飼っていました。何かの隙間に産卵しないかと思ってましたが、やはり貝じゃないとダメみたいです。
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